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【映画ライターが分析】安定感と超絶技巧に魅了される。役者・二宮和也の5つの才能

#SYO
2020年11月5日 by

映画ライターのSYOと申します。日本のドラマ・映画界に欠かせない俳優さんの「5つの魅力」を分析する本企画、第14回は二宮和也さんをご紹介します。

アイドルグループ「嵐」のメンバーとして、多方面で活躍する二宮和也さん。彼の特長として皆が挙げるのが、その高い演技力です。多くの俳優や監督、評論家から「天才」と称される二宮和也さんは、いわゆる難役を多くこなしてきました。最新主演映画『浅田家!』では、東日本大震災をテーマにした実話に挑戦。実在の写真家に扮し、人間味あふれる演技を披露しています。

今回は、そんな二宮和也さんの俳優としての魅力を、映画を中心に、5つのパートで分析します。

1 初期作から別格! 揺るがぬ「安定感」

「嵐」の5人が主演した2002年の映画『ピカ☆ンチ LIFE IS HARD だけど HAPPY』でスクリーンデビューし、2003年の映画『青の炎』で単独初主演を飾った二宮和也さん。

思えば、自分が二宮和也さんの演技に初めて魅了されたのも、本作だったように思います。本作で彼が演じたのは、家族の身を守るため、養父を殺害しようとする17歳の男子高校生。たった一人で完全犯罪を成し遂げようとする孤独な少年の心情を、繊細に演じ切りました。

演出家の蜷川幸雄さんが監督を務めたことでも話題を集めた映画『青の炎』ですが、必見といえるのが二宮和也さんの抜群の安定感。もちろん、テレビドラマや舞台の出演経験も豊富で、嵐としても活躍していたのですが、それでも、この刺すような痛々しさを全身で体現できたのは、驚異的です。当時高校生だった僕は、二宮和也さんの見事な演技に涙してしまったのでした。

余談ですが、その後に「性」をテーマにした青春コメディドラマ『Stand Up!!』のコミカルな演技を観て、「二宮和也さん、すげぇ!」と驚いた覚えがあります。

2 どの時代の登場人物にもなれる「対応力」

これまでに20本弱の映画に出演してきた二宮和也さんですが、俯瞰して見てみると、約3分の1が現代劇でないことに気づかされます。これはかなり珍しい特徴で、二宮和也さんの役者としての演技力を如実に表しているといえます。

例えば第二次世界大戦を描いた映画『硫黄島からの手紙』は、世界的な監督で俳優のクリント・イーストウッド監督作品ですし、戦後を舞台にした映画『母と暮せば』は、山田洋次監督作品。巨匠たちとのタッグも多く、独特のセリフ回しや役どころを違和感なくこなせる適応力は、目を見張るものがあります。

新人検事を演じた映画『検察側の罪人』は現代劇ではありますが、セリフが小説に近く、やや文語的な側面があり、演じる側としてはかなり大変だったと推察されますが、こちらも的確な演技でリアリティを担保しています。ちなみに本作では、容疑者に尋問するシーンで「人殺しと同じ空気吸って、反吐が出る思いでやってやってんだよ!」と激昂するなど、二宮和也さんの圧巻の演技力を堪能できます。

3 過度な“飾り”を必要としない「説得力」

二宮和也さんの演技力の凄さを感じさせられるのは、ビジュアル面でもそう。彼が映画の中でこれまで演じてきた役は、髪形や衣装の違いはあれど、そこまで劇的に見た目の差があるものではありません。地に足の着いたリアルなキャラクターたちを、明確に演じ分ける技術を有していることが、よくわかります。

もちろん、『ピカ☆ンチ』シリーズや『GANTZ』シリーズ、映画『大奥』など、ビジュアル的にもキャラが立っているものはありますが、例えば『母と暮せば』と『検察側の罪人』では、ヘアスタイルはそこまで大きくは変わりません。にもかかわらず、全く別人に見えるのは、二宮和也さんだからこそなせる業といえるでしょう。

見た目から分かりやすくキャラクターを作る、という常套手段を用いずとも、むき出しの演技力だけで別人になりきってみせる。それが完璧に行えているから、ビジュアルを作りこむキャラクターでも、映えるのです。

さらに、映画『浅田家!』においては、主人公がカメラマンという夢を見つけ、成長を遂げていく“年月”すらも演技で魅せ切っています。とにもかくにも、二宮和也さんの演技には強い「説得力」があるのです。

4 少年から超生物まで――善にも悪にも化ける「声」

個人的には、二宮和也さんは声の演技も特徴的だと感じています。もともと少年性があり、一度聴いたら耳に残る声質に、高い技術が足されているため、個性に引っ張られすぎるところがありません。

セリフが強い役や、聞かせどころのシーンでは声を「立てる」ことで、言葉の強度を上げていますし(『検察側の罪人』などはまさにそう)、“亡霊”を演じた『母と暮せば』では、不思議な浮遊感と、大人になりきれない未成熟な“青さ”を、声の演技にも付加しています。時代ものの映画ではセリフが現代の言い回しとは異なるために声色の使い分けも重要になってきますが、流石のテクニックを感じさせます。

そんな二宮和也さんの声の演技力がいかんなく発揮されているのが、声優を務めたアニメ映画『鉄コン筋クリート』です。この作品では、ストリートチルドレンと、伝説の“餓鬼”の二役を演じ分けており、無鉄砲な少年の“無垢さ”と“狂気”の危ういバランスを、見事に声で表現しています。ちなみに、共演した蒼井優さんとの演技合戦も半端じゃないので、未見の方はぜひチェックしてみてください。

余談ですが、実写映画『暗殺教室』シリーズでは、声優と出演の両方をこなしています。黄色いタコのような謎の超生物を、「ヌルフフフ」という原作でおなじみの笑い声まで再現しており、「こういう演技もいけるのか!」と感嘆させられます。

5 ふと見せる「翳(かげ)り」、美しい「涙」

いよいよ、最後の項目です。二宮和也さんの最新主演映画『浅田家!』で、印象的なシーンがありました。それは、カメラを持った主人公が、その先にある何かを見て涙を流す場面。カメラはあえて視線の先をすぐには見せずに、二宮和也さんの表情をじっと見つめます。作中屈指の名シーンですが、最初は目を潤ませるくらいだったそう。

中野量太監督が「涙を流してほしい」とリクエストしたところ、次のテイクでは涙を頬につたわせたのだとか。ほかにも、劇中では涙を流すシーンが複数用意されていますが、「涙をこらえる」から「泣き出してしまう」まで、多彩な「泣きの演技」を披露しています。

このように、直接的な「泣く」もそうですが、「泣かないまでも、哀しみを漂わせる」翳りの演技とでもいうべきものが、二宮和也さんは実に上手い。前述の作品群の中でも、ふっと表情を曇らせる瞬間を入れたり、孤独感を漂わせたり……。『青の炎』しかり『黄色い涙』しかり、最新作の『浅田家!』に至るまで、一貫している部分といえるかもしれません。

やはり人が涙を流したり、弱さを見せたりする姿は、強く印象に残るものです。その中でも二宮和也さんが見せる寂しさや涙は、とても綺麗で美しい。純度が非常に高いため、こちらもピュアな気持ちにさせられるような気がします。

まとめ

二宮和也さん=天才俳優、というイメージは自分の中でも強くありましたが、改めてじっくりと考えてみたことで、彼の役者としての底知れなさがより際立ってきたように感じています。

単独初主演映画で既に成熟感があった二宮和也という役者が、今後、年齢を重ねていくなかでどんな役柄に挑戦するのか――。想像するだけで、ワクワクしてきますね。まずは次回の出演作品を、楽しみに待ちたいと思います。

SYO (映画ライター)

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイトの勤務を経て映画ライターに。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「新R25」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema」

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